太陽光発電の主力エネルギー化を加速ー
スマートソーラーの10トレンドを発表
2023.1.18
   

2022年12月23日、深セン市において、ファーウェイはスマート太陽光発電の10大トレンド発表会を催し、ファーウェイスマート太陽光発電事業の陳国光プレジデントが、マルチシーンコラボレーション、デジタルトランスフォーメーション、セキュリティ強化などの観点から、スマート太陽光発電の10大トレンドに関する知見を紹介し、ホワイトペーパーを発表しました。

 


 

 




再生可能エネルギーの比率が高まるにつれ、太陽光発電産業は急成長を遂げていますが、LCOE(均等化発電原価)の継続的な低減、O&M効率の改善、再生可能エネルギーの増加に伴う電力システムの安定性、エンドツーエンドのシステム安全性の確保など多種多様な課題に直面しています。

陳氏は次のように述べています。「カーボンニュートラルとカーボンピークアウト」に向けた取り組みが世界的に広がり、太陽光発電の主力エネルギーへの移行が大幅に加速しました。太陽光発電産業が急成長する中、これらの課題はチャンスでもあります。ファーウェイは、太陽光発電業界の10のトレンドをまとめ、自社の洞察や考え方をパートナーや持続可能な開発に関心を持つ組織や個人に積極的に共有したいと考えています。」

 

トレンド1 太陽光発電+ESS(エネルギー貯蔵システム)

 

より多くの再生可能エネルギーが電力網に供給されるようになると、システムの安定性、電力バランス、電力品質の面でさまざまな複雑な技術的問題が発生します。

そのため、有効電力/無効電力の制御と応答能力を高め、周波数と電圧の変動を積極的に緩和する新しい制御モードが必要とされています。太陽光発電と蓄電システムの統合、およびグリッドフォーミング技術により、電流源制御の代わりに電圧源制御を使用し、強力な慣性サポート、過渡電圧安定化、およびFRT(Fault Ride Through)技術を提供する「スマート太陽光発電+ESS」を構築することができます。これにより、太陽光発電はグリッドフォロイング型からグリッドフォーミング型へと変化し、太陽光発電の主力エネルギー化を加速することができます。

 

トレンド2 高密度・高信頼性

 

太陽光発電所の機器の高出力化・高信頼化が大きな流れとなっています。インバータを例にとると、現在、インバータの直流電圧は1100Vから1500Vに上昇しています。炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)などの新材料の活用、デジタル技術、パワーエレクトロニクス技術、熱管理技術の高度な融合により、今後5年間でインバータの電力密度は約50%向上し、高い信頼性も維持できると期待されています。

海抜3100mの場所に設置された中国・青海省の220万kWの太陽光発電所は、厳しい環境下で9216台のファーウェイ製スマートPVコントローラー(インバーター)が安定稼働しています。インバータの総稼働時間はすでに2000万時間を超え、稼働率は99.999%に達しています。

 

トレンド3 モジュールレベルパワーエレクトロニクス(MLPE)

分散型太陽光発電は、産業政策や技術の進化に後押しされ、近年、著しい発展を遂げています。一方、屋上資源の利用率の向上、太陽光発電量増加に加えて、太陽光+ESSシステムの安全性確保などの課題に直面しています。そのため、よりきめ細かな管理が求められています。

太陽光発電システムにおいて、モジュールレベルパワーエレクトロニクス(Module-Level Power Electronics、MLPE)とは、マイクロインバータ、パワーオプティマイザ、断路器など、1つまたは複数の太陽光発電パネルに対してきめ細かな制御を行うことができるパワーエレクトロニクス機器を指します。MLPEは、モジュールレベルの発電、監視、安全なシャットダウンなど、独自の価値を持っています。太陽光発電システムの安全性・インテリジェント化が進む中、分散型太陽光発電市場におけるMLPEの普及率は2027年までに20%~30%に達すると予想されています。

 

トレンド4 モジュール型エネルギー貯蔵

従来の集中型ESSソリューションと比較して、分散型アーキテクチャとモジュール設計を採用しているスマートストリングESSソリューションは、革新的な技術とデジタルインテリジェント管理により、バッテリーパックレベルでエネルギーを最適化し、ラックレベルでエネルギーを制御します。これにより、放電エネルギーの増加、効率的な投資、シンプルなO&M、さらに蓄電システムのライフサイクルを通じた安全性と信頼性を実現します。
2022年、東南アジア最大の蓄電システムプロジェクトであるシンガポールの周波数調整・バックアップ電源用200MW/200MWh ESSプロジェクトにおいて、スマートストリングESSは、より長時間の定電力出力を実現し、周波数調整効果を確実にするために、きめ細やかな充放電管理機能を実装しています。また、電池パック単位でのSOC自動校正機能により、人件費の削減とO&Mの大幅な効率化を可能にしています。

 

トレンド5 セルレベルのきめ細やかな管理

太陽光発電システムがMLPEに移行しているのと同様に、リチウムイオン電池BESS(蓄電池システム)も管理単位の小型化が進んでいくと予想されています。電池セルレベルでのきめ細やかな管理が、効率性と安全性の問題に対処できる重要な手段とされています。現在、従来のバッテリー管理システム(BMS)は、限られたデータの集約と分析にとどまり、初期段階で故障を検出し警告することはほとんど不可能です。そのため、BMSはより高感度でインテリジェント、さらには予測的であることが必要です。これは、大量のデータの収集、演算、処理、そして最適な運転モードの発見や予測を行うAI技術に依存します。

 

トレンド6 太陽光発電+ESS+グリッドの統合

発電側では、PV+ESSのクリーンエネルギー拠点を構築し、UHV送電線により負荷センターに電力を供給する事例が増えています。電力消費側では、バーチャルパワープラント(VPP)が多くの国で普及しつつあります。VPPは、大規模な分散型太陽光発電システム、ESS、制御可能な負荷を統合・制御し、発電装置や蓄電装置を柔軟にマネジメントすることにより、電力の需給バランス調整を図ることができる技術です。
したがって、PV+ESS+Gridを統合した安定したエネルギーシステムを構築し、太陽光発電供給と系統連系をサポートすることが、エネルギー安全供給を確保するための重要な施策になると考えられます。デジタル技術、パワーエレクトロニクス技術、エネルギー貯蔵技術を統合することで複数のエネルギー源による連携・補完効果が得られます。バーチャルパワープラント(VPP)は、5G、AI、クラウド技術などの技術を通じて、大規模分散型PV+ESSシステムの電力のインテリジェントな管理、運用、取引が可能になり、より幅広い国で実用化されることが期待されています。

トレンド7 安全性の向上


安全性は、太陽光発電と蓄電産業の発展を支える基盤です。そのためには、あらゆるシナリオを体系的に検討し、パワーエレクトロニクス、電気化学、熱管理、デジタル技術を統合して、システムの安全性を高めることが求められています。

太陽光発電所では、直流側に起因する故障が全体の70%以上を占めています。そのため、インバータはバッテリモジュールの自動切断と自動コネクタ検出をサポートする必要があります。分散型PVのシナリオでは、AFCI(Arc Fault Circuit Breaker)機能が標準構成となり、モジュールレベルの緊急シャットダウン機能により、保守スタッフや消防士の安全が確保されます。ESSのシナリオでは、パワーエレクトロニクス、クラウド、AIなどの複数の技術を駆使して、電池セルからシステム全体までESSのきめ細かな管理を実施する必要があります。従来の受け身的な対応や物理的隔離による保護方法を、プロアクティブな自動保護に変更し、ハードウェアからソフトウェア、構造からアルゴリズムに至るまで、多層的な安全設計を実装する必要があります。

 

トレンド8 セキュリティと信頼性

 

太陽光発電システムは、メリットをもたらす一方で、機器の安全性や情報セキュリティなど、さまざまなリスクも抱えています。機器の安全リスクとは、主に故障による停止を指します。情報セキュリティリスクとは、外部からのネットワーク攻撃などです。これらの課題や脅威に対処するために、企業や組織はシステムや機器の信頼性、可用性、安全性、回復力など「安心・安全」な管理の仕組みを構築する必要があります。また、人の安全や環境の保護、個人情報保護も図る必要があります。

トレンド9 デジタル化

従来の太陽光発電所は大量の機器が使われており、十分な情報収集機能や送信経路が確保されていません。また、ほとんどの機器は互いに「通信」することができないため、大まかな管理機能しかありません。

5G、IoT、クラウドコンピューティング、センシング技術、ビッグデータなどの高度なデジタル技術の導入により、太陽光発電所は情報を送受信し、「ビット」(情報の流れ)を使って「ワット」(エネルギーの流れ)を管理することができるようになり、発電-送電-蓄電-給電-消費という一連の流れを可視化し、管理、制御することが可能になります。

現在多くの太陽光発電所はデジタル化を進めており、2027年までには95%以上の発電所がデジタル化を実現すると見込まれています。

トレンド10:AI活用

エネルギー産業がデータの時代へと向かう中、データを効率的に収集・活用し、その価値を最大化することは、産業全体の最重要課題の一つとなっています。

AI技術は再生可能エネルギー分野に広く応用され、製造、建設、O&M、最適化、運用などPV+ESSのライフサイクル全体において必要不可欠な役割を果たすことができます。AIとクラウドコンピューティング、ビッグデータなどの技術の高度な融合が進み、データ処理、モデルトレーニング、導入・運用、安全監視などに焦点を当てたツールチェーンが充実していくでしょう。再生可能エネルギー分野では、パワーエレクトロニクスやデジタル技術のように、AI技術の活用がこれまでにない産業変革をもたらすことでしょう。

最後に陳国光氏は次のように締めくくりました。「5G、クラウド、AIの融合アプリケーションは、あらゆるものがセンシング機能を持ち、あらゆるものがネットワークに接続されるというインテリジェント世界を築きます。それは私たちが考えるよりも早くやってくるのです。ファーウェイが発表した太陽光発電業界の10のトレンドは、グリーンでインテリジェントな近未来世界の姿を描いています。我々は、あらゆる分野の人々が手を携えてカーボンニュートラルの目標を達成し、よりグリーンでより良い未来を築くことができるよう願っています」。